017171 ランダム
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ペアリング 2

              【ペアリング 2】


              大切に想っていたものは、
              後で必ず帰ってくるもの…なのかな?

              今年の春に自分のペアリングをなくしてからというもの、
              彼のリングを首にかけて毎日を送っていた私。

              ある週末の仕事のときだった。
              その日の仕事先は、前にリングをなくしたあのホール。

              ここのホールではいい事ないんだよなぁ

              そんな事を思いながら控え室に行くと、
              仲のいい先輩が制服に着替えているところだった。
              その先輩には、そのホールでなくしたリングのことも、
              彼の対応の事も言っていた。

              先輩は、おはよう!と声をかけながら
              私に質問を投げかけてきた。

              「そういえば、指輪は見つかった?」

              私がいくら探してもないということを言うと
              先輩は優しくアドバイスをしてくれた。

              「そのときに届けられてなくても、後で届いてる事もあるから
              もう一回事務所に聞いてみたら?」

              …確かにそうかも…。
              最後にもう一回だけ聞いてみるか。
              これでなければもう仕方ない。

              そう思い、仕事が終わった後事務所に行って聞いてみたところ…


                 リングはあった




              …けれど、
              ……けれど、

              銀の指輪は、重いドアにはさまれたのか、形は見事に歪み、
              表面は傷だらけだった。

              一瞬泣きそうになったけど、こらえて彼に連絡。

              指輪、あったよ。
              でもすごい歪んじゃってるし
              ぼろぼろで傷だらけなんだ…。
              もうはめられないよ。

              メールを送る。
              返事はすぐに返ってきた。

              『よかったじゃん!
              もしかしたら直せるかもしれないし!』

              …見つかってよかったけど直せないよ…。






              指輪が見つかったその日、
              私は彼に、見つかった指輪を見せた。

              ちょっと困惑したような顔をした彼だったけれど、
              そのぼろぼろになってしまった指輪を、
              彼は自分のネックレスに通して、首にかけた。

              すごくみすぼらしくなってしまった私の指輪。

              それを見たくなくて、私の家で保管しとくからと言ったけど、
              彼は指輪を返してはくれなかった。




              数週間後…

              指輪は元の綺麗な銀色の丸い指輪になって戻ってきた。

              彼が直してくれたのだ。

              多少表面の傷は消えていないにしろ、
              それは新品同様の綺麗な指輪になっていた。

              私の薬指に指輪をはめながら、彼が一言。

              「直ったでしょ?」

              涙が出るくらい嬉しかった。
              でも泣くかわりに笑っていた。
              嬉しかった。


              もうなくさない。

              そう誓った。



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